プレ・ガンダーラ期  宗教用具(化粧皿) 






























宗教用具(化粧皿)
緑泥片岩

ガンダーラ地方 
プレ・ガンダーラ期
紀元0年前後

 この化粧皿は、クシャン朝がガンダーラを支配する1世紀後半以降ばったりと途絶え、代わりに仏像が出現する。

 ギリシャ神話を理解できる者だけでなく、霊魂の護送役として、広く誰にも救済者として理解できる「仏像」が、この化粧皿に代わって出現するわけである。化粧皿は、仏教徒の信仰対象で、仏像発生前のその代用品であったといえる。

 右画像は、3〜4世紀頃のガンダーラ地方のテラコッタで、トリトーンと海馬(獅子)である。(平山郁夫コレクションより)

 まさに、本品と同じ意匠である。化粧皿とは、時代が300年ほど隔たる。仏像出現以後、信仰対象は仏像となったが、ギリシャ神話のトリトーンにこめられた願いは、その後300年間継続していたといえる。

 石製の「化粧皿」と呼ばれるものが、インド・グリーク〜スキタイ・パルティア期に流行する。BC2世紀〜AD1世紀前半にかけて、タキシラのシルカップなどの遺跡から出土する。

 化粧皿と命名されているが、成分分析の結果、顔料は検出されていない。これは、化粧用ではなく祭祀用具であると考えられている。

■参考画像 ギリシャコイン
シチリア島・シラクサ
(コリント植民都市)  
405−367BC  銅貨

 この図は、海馬ヒッポカントスにトリトーンが乗ったものであろう。ヒッポカンポスは、本来は右画像(コイン)のように前半身は馬である。それが、この皿では獅子に変化している。

 トリトーンは、本来は海を鎮める役割を持っていることから、「三途の川渡し」のように、死者を導く案内人としての役割が与えられている。来世への希求、仏教でいう極楽往生の願いが込められている。

 このように、化粧皿はギリシャ神話を題材としながらも、そこにこめられた願いは仏教的である。用途は化粧用ではなく、儀式に用いた容器(穀物や香料入れ)であろう。

■参考画像 テラコッタ
ガンダーラ地方 3〜4世紀
幅5.5cm

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