ガンダーラ 弥勒菩薩像  



 

 































弥勒菩薩像  
雲母片岩  
h:21cm   2〜3世紀
おそらくサハリ・バハロール出土



 ガンダーラ美術最盛期のグレコローマンスタイルである。
 半眼で静かに瞑想する。右腕飾り、首飾りは精巧な彫りで、同時期の優品と共通する。左肩には衣がかかる。
 胸より下を欠損するが、身体の肉取りは写実的で力強い。2〜3世紀の最もヘレニスティックな作品の一つである。
 鼻に補修がある。




 材質は、鉄分の多いきめ細かな雲母片岩で、表面が酸化によりやや赤みをおびる。この石は、パキスタンではRed stoneと呼ばれる。腕の良い彫り師がこの石を用いたようで、Red stoneを使った作品は例外なく優品である。


 【弥勒菩薩】

 ふつう、菩薩といえば、釈迦の青年期の姿(悟りを開く前)をあらわす。頭には王侯らしくターバン装飾をつける。

 弥勒菩薩というのは、釈迦ではない。釈迦とは別の「未来の仏陀」である。弥勒は王侯出身ではなく、バラモン出身という設定のため、ターバン装飾はない。バラモン僧の長髪表現になる。ふつうは長髪を束ねたヘアスタイルをとるが、本品は髪を垂らしている。 

 弥勒菩薩が姿を現すのは、釈迦の入滅から56億7千万年後である。下生して仏陀となるまでは、兜率天で瞑想・修行をしている。
 ■参考画像 他の弥勒菩薩像

 左画像 栗田功氏編著 
Gandharan Art U より
 弥勒菩薩像 2〜3世紀
サハリ・バハロール出土 高さ97cm
 個人蔵(日本)
■左画像
 本品のように髪を垂らしたヘアスタイルの弥勒は数が少ない。左上画像は、そのタイプの最高傑作である。この高さは97cmある。身体の比率から見れば、この像の頭部は20cm程度となる。所蔵品の頭部は約10cmである。我が所蔵品は、この像ハーフサイズであることが分かる。
 所蔵品は胸より下を欠損するが、もとはこのような堂々たる体躯であったのであろう。ただし、所蔵品が立像であったか座像であったかは不明である。

右画像
日本 京都 広隆寺 
弥勒菩薩半跏思惟像
木造  7世紀 
国宝

■右画像
 国宝第1号として、あまりにも有名な飛鳥時代の弥勒菩薩像である。思索する弥勒菩薩像が、400年かかってガンダーラから極東にまで達すると、ここまで変化したのである。

■向かって左目に白化粧跡

 左図のように目の一部に白いものが残る。もとは像全体に白化粧が施されていたのかもしれない。その上に彩色していた可能性がある。ストウッコやテラコッタの像で確認されている彩色が、石製像でも行われていたことを示唆する痕跡である。

平山郁夫氏のコレクション内の「荼毘の図」の炎部分には白の胡粉に赤の彩色が多く残っていると聞く。

■参考画像 太陽神ミトラ(ミスラ)
 クシャン朝コイン
 カニシカ王銅貨の背面
 2世紀初め

 このコインに記された神の頭部には光輪が見える。古代、西アジアで 信仰された太陽神ミトラ(ミスラ)である。弥勒の梵名「マイトレーヤ」は、「ミトラ」と語源が同じであるらしい。ミトラが仏教に取り入れられ、菩薩として信仰されたという説が有力であるらしい。

 

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