ガンダーラ ヤクシニー像  





ヤクシニー像  片雲母岩
ガンダーラ北部スワート出土   2〜3世紀

■樹下美人図の源流
 上の樹下美人図は、MOA美術館蔵の唐代の紙本である。大谷探検隊によって将来されたもので、中国西域のトルファンから出土した。

 このような樹下美人図としては、日本では東大寺正倉院の「鳥毛立女屏風」が有名である。これらの樹下に美人という構図の源流こそが、インドのヤクシニー像である。

■仏教におけるヤクシニー
 そもそもは、森林の神霊のうち男をヤクシャ、女をヤクシニーと呼んだ。人間に恩恵をもたらすと同時に鬼神的な要素も強かった。
 それが仏教に取り入れられると、「夜叉」として、八部衆の一つとされた。仏界の守り神という役割となった。
 本品には、仏教の守護神という意味合いはなく、本来のニンフ的な女神像である。

 ガンダーラの彫像では、ヤクシニー像は仏伝の仕切り部分に置かれることが多いらしい。

 ヤクシニーは、インド古来の樹木の精・女神である。樹の下に立ち、葉を持つ姿勢で表現される。インドでは古来より、豊満な胸と極端にくびれた腰の肉感的な彫像で表現された。上の参考画像は、サータヴァーハナ朝時代のヤクシニー像である。ガンダーラ仏よりも100年以上古いものである。

 このような官能的な表現が、ガンダーラの彫像ではひかえめになっている。誇張を排して写実性を高めている。

■参考画像 インド・サーンチー遺跡
第 1ストゥーパ・東トラナ ヤクシニー像
AD1世紀初め
「神谷武夫とインドの建築」より

■参考画像 樹下美人図
トルファン出土 唐代 8世紀

 仏教においては、「沙羅樹の一枝を手にとったマーヤ夫人の右脇から、釈迦が誕生した」とされている。左の彫像(個人蔵:日本)はその場面を表したもので、左のヤクシニー像と同じ時期のガンダーラ彫刻である。

 樹下でのポーズ・足の交差など、同じモチーフであることは明らかである。

 仏伝でのマーヤ夫人の姿態表現に当たって、古来からのヤクシニーの表現方法を取り入れたためである。

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