「ヘラは怖い」 チャルキス・ドラクマ銀貨

エウボイア カルキス ドラクマ銀貨 340−294BC  18.0mm  3.69g
表:おそらくヘラ神像
裏:つめとくちばしで蛇をつかんだ鷲
■アトリビュート
 このコインの神像が誰なのかは不明である。決め手となる証拠がないからである。神の象徴となる物のことをアトリビュートという。ヘラクレスのアトリビュートは「棍棒」「ライオンの頭皮」。ゼウスのアトリビュートは「サンダーボルト」「鷲」。ポセイドンなら「三つ叉の槍」。ヘラのアトリビュートは、「
孔雀」と「ステファノス」(ヘアバンド)である。

■ルーベンスの絵画から「ヘラはどれ?」
 下の画像は、バロック絵画の大家ルーベンスの大作「パリスの審判」の一部である。3女神の中のどれがヘラなのかはすぐに分かる。足元に孔雀がいるのがヘラである。孔雀はヘラのアトリビュートなので。
 ちなみに、一番左の女神の後ろには人面のついた盾がある。この人面はメドゥーサである。下には兜も見える。武具を付ける女神といえばアテナしかない。中央の女神の後方には、幼児が見える。これはクピードー(キューピット)でアフロディーテ(ヴィーナス)のアトリビュートである。

■険しい表情=ヘラ?  女神の髪の毛のあちこちがカールしている。一見とぐろを巻いた蛇にも見える。髪の毛が蛇=「メドゥーサ」かと思うが、そうではない。メドゥーサはもっと邪悪な姿で描かれる。この神像には気品がある。しかし表情は険しい。かなり怖い。こんな女性に叱られたら縮み上がってしまいそうだ。

 女神の中では、アテナなら兜をかぶるし、アルテミスなら狩りのモチーフとセットになる。ニンフという可能性が高いが、この神像はニンフの柔和さには程遠い。となると、神像の候補となるのは大物「ヘラ」しかない? こうした理由から、この神像はアトリビュート(象徴物)がないにもかかわらず、ヘラであるとされている。
 
■嫉妬深い神
 ヘラはゼウスの妻である。同時にゼウス姉でもある?というややこしい関係だが、ギリシャ神話でのメジャーな女神である。浮気性の夫ゼウスに嫉妬し、浮気相手やその子への報復は過酷である。このような性格が、当コインの肖像がヘラとされる所以である。

■6月June
 ギリシャ神話のヘラは、ローマ神話のユノ(ジュノー)と同一視される。ローマ神話のユノは家庭の神で6月の守護神であった。6月の英語ジューン(June)は、この神名「ユノ」に由来する。



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