ギリシャ神話の風神 →クシャン朝 →風邪ひいてまんねん 


■ギリシャ神話
ルネサンスのサンドロ・ボッティチェリ作「ヴィーナス誕生」から

 この絵の左端で宙に浮かんでいるのは西風(春のそよ風)の神ゼビュロスである。ゼビュロスは同じくボッティチェリの大作「春」にも現れている。
 
■ギリシャ神話
バロック時代のルーベンス作「オレイテュイアを略奪するボレアス」


 荒々しい北風の神ボレアスはアテナイの王女オレイテュイアを略奪した。そのシーンを描いたのがこのルーベンスの大作である。

 北風とは、ギリシャの北部トラキアの山脈から吹き下ろす冬の「トラキア嵐」である。ペルシャ戦争では、アテナイ人は風神ボレアスに祈り、
停泊していたペルシアの船団が猛烈な嵐に見舞われたという。ギリシャ版「神風」である。


■風神の変遷
 ゾロアスター教の風神はペルシャ語で「ワータ」という。クシャン人はそれを「ウァドー」と呼んでいた。インド北西部〜現在のアフガニスタンの地方を治めたのがクシャン朝であった。この地ではヘレニズム文化が熟成されており、ガンダーラでは仏像が出現する。ゾロアスター教の風神「ウァドー」の偶像も現れた。風神の偶像化については、そのモデルは、ギリシャ神話の北風神「ボレアス」である。


■クシャン朝 カニシカ王 銅貨  2世紀頃 
17.1g 24mm
 
表:カニシカ王の立像
裏:風神像 
■風神が日本にまで来る
ギリシャ神話の「ボレアス」の姿が中央アジアの風神「ウァドー」に取り入れられた。やがてこれが仏教とともに中国、そして日本にまで伝わった。
■風神のマントが袋になった?
 左画像には模様の流れに沿って黄色の点線を入れてみた。コインの風神は、両手で帆のようなマントの端を持っている。そしてマントは風をはらんでふくれあがっている。
 このマントを筒状の袋に置き換えたら、俵屋宗達の「風神雷神図」の風神に近づくのではないか? 江戸時代の俵屋宗達は、三十三間堂にある鎌倉時代の木彫「風神雷神像」を参考にしたと言われている。その風神像もまた、袋は筒状で、口が二つある。クシャン朝の風神「ウァドー」のマントを袋に換えた形である。
 

 ※下は、俵屋宗達作:国宝「風神雷神図」


■現代の風神 「風邪ひいてまんねん」
 左画像は、製薬会社「カイゲン」のトレードマーク 

テレビのCMでの「風邪ひいてまんねん」は、あまりに有名。

関西では冬の挨拶になっている。「寒いね〜。」「うん、寒いな〜、今風邪ひいてまんねん。」と言う。

この風神は、俵屋宗達の風神図からとったものだろうが、袋はサンタクロースのようになっている。筒状にはなっていない。この風神図がおそらく世界最先端の変形であろう。このキャラクターの源流をたどればクシャン朝に、さらにはギリシャにまで遡るというのが、実に愉快だ。



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