キリスト誕生前 ハスモン朝〜ヘロデ王

 BC10世紀には、ダビデ・ソロモンのイスラエル王国が繁栄した。その後は、アッシリア・新バビロニア(バビロン捕囚)・アケメネス朝ペルシャの支配下となる。ペルシャをアレクサンドロスが倒し、以後プトレマイオス朝、セレウコス朝へと支配が変わる。ヘレニズム国家であるので、ギリシャ的な文化が流入する。

■ハスモン朝(167〜37BC)

 167BC、セレウコス朝からユダヤ国家としてハスモン朝が独立。
ハスモン朝   アレクサンドロス・ヤンナイオス(在位 103〜76BC)
表面(左): 2本のコルヌコピアの間にザクロ
裏面(右)の文字はヘブライ文字:「Yonatan ユダヤの大祭司そして議会」?

■63年BC、ユダヤはローマの属国になる。
 ポンペイウスの遠征により、セレウコス朝シリアが滅ぶ。ハスモン朝はある程度の自治を認められ、存続していくが、ローマのシリア属州の一部となる。

■40年BC〜 
 ヘロデ王(キリスト誕生の時のユダヤの王)


 ヘロデの父はハスモン朝下の「親ローマ」武将で、ローマと強いコネクションを持っていた。息子のヘロデは、ハスモン朝の内紛に乗じてローマに渡り、ローマ軍勢を借り受けた。そしてエルサレムを陥落させて、王となった。ローマとしては、属州内に親ローマの王を建てることで安心できる。ヘロデはローマの情勢を読むのに敏感で、アントニウスからオクタウィアヌス(アウグストゥス)へと乗り換えていく。


 聖書には「新たな救世主(メシア)の誕生を恐れたヘロデが、2才以下の幼児・乳児を虐殺させた」とあるが、これは史実ではないようだ。ただ、ハスモン朝の勢力を全て殺戮した事実はあり、ヘロデの残虐性を示していると言われている。

 ヘロデは、20年BC、エルサレム神殿の大改修を行っている。後にユダヤ戦争では、この神殿にユダヤ人がたてこもる。現在、「嘆きの壁」が残るが、それはこの壁の一部である。

ラファエロ「大公の聖母」 1504年
ヘロデ王  40〜4年BC
表面(左): 2本のコルヌコピアの間にカドゥケウス
裏面(右): アンカー(錨)とギリシャ文字で「ヘロデ王」

ユダヤコインにおけるギリシャ神話を由来とするモチーフ

 2つのコインとも、表面のデザインは似ている。2本の角が対称にV字形に配置してある。角は、コルヌコピアという。その間にあるのが、ヤンナイオス貨ではザクロ。ヘロデ貨ではカドゥケウスという杖である。

■コルヌコピア
 「豊穣の角」。ギリシャ神話に由来する。ゼウスを育てたヤギ「アマルティア」の角で、豊穣のシンボル。
■カドゥケウス
 ギリシャ神話のヘルメス(ローマ:マーキュリー)の持つ2匹のヘビが巻き付いた杖。後の西欧では商業の象徴となった。日本でも、一橋大学の校章となっている。

■コルヌコピア・カドゥケウスは、ローマコインにも見られる。
コルヌ・コピア カドゥケウス
ルキウス・ウェルス帝銀貨
161〜169年AD 裏面
マルクス・アウレリウス帝銀貨
164〜165年AD 裏面 
ウェスパシアヌス帝銀貨
70年AD 裏面 

■ユダヤは歴史的にヘレニズム国家の支配を受けているので、コインにもギリシャ文字やギリシャ神話のモチーフが見られる。異教のギリシャ神話のモチーフなど、一神教のユダヤ教からすれば論外のはずなのだが・・・・。当時のユダヤ人は、ギリシャ神話の影響を知らず知らずに受け入れていたのか?  


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