ネロ


ネロ帝(治世54−68年) 
デナリウス銀貨 64-65年発行 
  3.0g 17mm ローマミント

 ネロは、太い首に二重あごという特徴的な風貌である。ローマコインには数多くの皇帝肖像があるが、太めのネロは特に目立つ。このコインのように摩耗が激しくとも、一見してネロだと判別できる。


■初代皇帝アウグストゥスからの直系 
アウグストゥス − ユリア(女) − 大アグリッピナ(女) − 小アグリッピナ(女) − ネロ
 
 アウグストゥスの唯一の実子がユリアで、このユリアとアウグストゥスの朋友アグリッパとの子が、アグリッピナ(大)である。大アグリッピナの子が、カリグラと小アグリッピナ。カリグラは悪名高い皇帝である。カリグラの妹の小アグリッピナの子がネロである。

●母・小アグリッピナ
 ネロの母小アグリッピナは野心家で、一癖も二癖もある。結婚は3度しており、ネロは一人目の夫との子である。3人目の夫は、自分の叔父である皇帝クラウディウスである。クラウディウスは歴史家であり、皇帝としても堅実であったが、家庭面では無頓着であった。この結婚は、小アグリッピナが連れ子のネロを次期皇帝にするための策略であった。クラウディウスの死は、毒キノコの中毒であったが、これには小アグリッピナが関わっているとされている。
 実子ネロを皇帝につかせ、さらに自身が権力をふるおうとするが、自立心の芽生えたネロと対立する。母を疎ましく思うネロは、皇帝就任5年後、ついに実母を殺害する。


■名君ネロ 〜哲学者セネカと近衛長官ブッルスの補佐
 ネロの家庭教師はストア派哲学者のセネカで、軍事面での側近は近衛長官ブッルスであった。若年であるネロをこの強力な2人が補佐したため、治世初期は善政を敷いた。
 その歯車が狂うのは、母の殺害からである。そして側近のブッルスの死、セネカの離脱と続く。


■ローマ史上最悪帝?
 「ローマ史上の最悪帝は?」と聞かれたら、ほとんどの人が「ネロ」と答えるのではないか。ネロは悪帝の代名詞のようになっている。しかし、悪帝としての度合いならば、カリグラやエラガバルスの方がはるかに上だろう。ネロこそが悪帝の代表とされているのは、キリスト教史観の影響だろう。ネロはローマ大火の罪をキリスト教徒になすりつけたのである。2大使徒のペテロ(ペトロ)もパウロも、ネロの治世において殉教している。
 下の絵は、キリスト教徒を処刑(右端)する場面の想像図である。

ヘンリク・シェミラツキ作 19世紀 「ネロのたいまつ」


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