元禄染錦とイギリス磁器


■元禄様式(金襴手)の誕生
 柿右衛門様式は、時代区分としては「延宝様式」と呼ばれている。元禄になった1690年頃からは、新しい様式が生まれた。金襴手と言われる染錦である。濃い染付の上に赤と金を多用した華やかな「元禄様式・金襴手」の色絵である。

 このような装飾が流行した背景には、元禄文化が重なる。町人文化が栄え、華やかさを求めた時代である。そもそもの金襴手は、明の嘉靖期(16世紀中頃)に生まれた技法である。この金襴手を伊万里流に構成したのが「古伊万里元禄様式」である。

 金襴手の器は、国内向けにも国外向けにも生産された。輸出品においても、柿右衛門様式に代わって、金襴手がヨーロッパ人を魅了した。今、これら元禄様式・金襴手は、オールドジャパンと呼ばれている。当時のヨーロッパにおいても、金襴手の器は日本製であると認識されていた。それまでの柿右衛門様式は中国製だと思われていたのである。
 
■元禄様式 染錦花篭文 雪輪形 18世紀初頭頃 径:20.8cm  
■拡大図
 上図の品は、イギリスの城館にあったものである。里帰り品である。これは小振りな方であるが、金襴手の華やかな大皿や巨大な沈香壺など、装飾品としての伊万里磁器が多数、海を渡っている。

■イギリス ダービー窯 カップ&ソーサー 1806〜25年
■元祖「キングズ」パターン
 ロイヤルクラウンダービー社は、創業者が1876年にロイヤルウースター社から独立設立し、それが発展したものである。一方、ダービー社は1848年には閉窯しており、2つは本来全く別のものである。

 ダービー社のこの意匠パターンは、ブルア(経営者名)期に大量生産されたものである。この図案を、後に、ロイヤルクラウンダービー社が取り入れ、1900年頃に「キングズ」パターンとして売り出している。

元祖「キングズ」パターンがこれである。
カップ径:9.2cm ソーサー径:14cm
伊万里金襴手風の模様

■伊万里金襴手写し
 金を多用した伊万里風デザインであるが、オリジナル伊万里とはかなり異なっている。デザインの意図は、何となく伊万里金襴手の雰囲気を写すという姿勢である。我々日本人から見れば、和洋折衷の何とも不思議なデザインである。
 このような伊万里写しはたいへん人気があったようで、ダービー窯・ウースター窯・スポード窯等、イギリスのほとんどの窯で、この手の金襴手風デザインを生産した。その後も長きにわたって生産している。



リンク: 柿右衛門様式

リンク: 柿右衛門とマイセン



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